運命のヒト
熱で朦朧としていたせいか、寝る前の記憶がぼんやりしてる。
なんだか不思議な、だけど妙に懐かしい話を聞いた気がするんだけど。
そして、唇に温かいものが触れた気も。
「……夢、かな」
唇を指でなぞりながら、つぶやいた。
うん。たぶん夢だよね。
よりによってキスしてもらう夢を見るなんて、あたしってば、けっこう図々しい。
時計を見ると、8時だった。
やばい、仕事遅刻しちゃう! 大慌てで部屋を飛び出した。
そして洗面所に向かおうとしたとき。ふいに、あたしは足を止めた。
無造作に開いたままの、シロの部屋のドア。