運命のヒト
「……シロ?」
なぜか胸騒ぎがして、おそるおそる部屋に入った。
その瞬間、胸騒ぎは胸の悲鳴に変わった。
朝陽が射す、誰もいない室内。
曇った窓ガラス。
そして、そのガラスに、指で書いた文字――……
『出かけます』
そこから続く次の言葉が、あたしの心臓を容赦なく突き刺した。
今にも崩れてしまいそうな足取りで、窓の前まで歩く。
「……どうして」
ねぇ、シロ。どうして……。
『もし戻らなかったら
そのときは、オレを忘れて』