運命のヒト
Chapter.3
失われた記憶
嵐のように現れて、あたしの扉をこじ開けた人。
そして去っていくときも、あまりに突然すぎた人。
開け放したままの扉から、冷たい風が吹きこんでくる。
温めてほしいアナタは、もういない。
シロが出て行って3日目の夜。
いつも彼がちょこんと座っていた、リビングの茶色いラグマットの上で、あたしは膝を抱いてDVDを観ていた。
ふかふかのラグマットの毛並みは、ひとりぼっちで座る今、ちっともあたしを温めない。