運命のヒト
秘密の箱
「……どうなってんだよ、一体」
帰りのタクシーの車内。重苦しい空気の中、大我が眉間をもみながらつぶやいた。
トシロー君とシロは全くの別人だったけど、その間違いのおかげで得た、新しい真実。
「さっきの話の通りなら、お前は小5の時、シロっていう男に会ってる。しかも年上の男。
そして、次の日にはシロのことを、キレイさっぱり忘れてる」
ワケわかんねぇ、と大我が吐き捨てた。
あたしはさっきから体の震えが止まらなかった。
得体の知れない何か、自分の手には負えない世界が、ぱっくりと口を開けてそこにある気がした。