運命のヒト
「そういえばアイツ……俺の後遺症のことも知ってそうだった」
大我は自分の左手を見つめながら言った。
「でも……じゃあアイツは誰なんだ。何者なんだよ」
キャパを越えて混乱したような声。
あたしは迷った末に、以前から頭の片隅にあった一言を口にした。
「……現実的な考え方じゃ、答えは見つからないのかもしれない」
瞬間、大我の顔に強い困惑の色が浮かんだ。
「現実的以外にどんなこと考えろっつーんだよ。変なこと言うな!」
イラだちと戸惑いをぶつけるような声に、タクシー内の空気がビリッと震える。
その迫力にあたしは身がすくみ、ドライバーさんも息を飲んだのが雰囲気で伝わった。