運命のヒト
「……悪い」
沈黙のあと、大我はバツが悪そうにつぶやくと、シートに背中をあずけて長い息を吐いた。
あたしは首を横に振った。彼がむやみに声を荒げたりするような人じゃないことは、十分わかってる。
だからこそよけいに、大我が怒鳴ってまで否定したかったことの重さを痛感した。
窓の外を流れるのは華やかなイルミネーション。
それとは対照的に、車内は疲労にも似た空気が充満している。
あたしと大我は別々の窓を向いたまま、タクシーを降りるまで一言もしゃべらなかった。
* * *
「――園さん……ねぇ、美園さんってば」
「あっ、はい!」