運命のヒト


沢村さんはタクシーを止めると、あたしを車内に押し込もうとした。


「やだっ……やめて」


拒むあたしに、怪訝な顔をするドライバー。

「お客さん、嫌がってるけど大丈夫なんですか?」


「おかまいなく。ちょっと痴話ゲンカしちゃっただけなんです。ほら美園、早く乗りな。運転手さんが心配してるだろ」


ふざけるな、と言いたい。

だけど急に動いたせいで、吐き気と激しいめまいに襲われて声さえ出せなくなった。
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