運命のヒト

耳鳴りがして、目の前が暗くなる。

力の入らない体が、じわじわと車内に押しこまれてゆく。


もうダメだ――と思ったそのとき。

あたしの背中を押していた沢村さんの力が、ふっとゆるんだ。


背後で何か倒れる音、そして、沢村さんの短いうめき声。


……何が、起きたの……?

ふり返って確かめようとしたけれど、そうする前にあたしの意識は遠ざかっていった。




次に気づいたときには、あたしは自分の部屋のベッドで仰向けに寝ていた。

< 251 / 415 >

この作品をシェア

pagetop