運命のヒト
耳鳴りがして、目の前が暗くなる。
力の入らない体が、じわじわと車内に押しこまれてゆく。
もうダメだ――と思ったそのとき。
あたしの背中を押していた沢村さんの力が、ふっとゆるんだ。
背後で何か倒れる音、そして、沢村さんの短いうめき声。
……何が、起きたの……?
ふり返って確かめようとしたけれど、そうする前にあたしの意識は遠ざかっていった。
次に気づいたときには、あたしは自分の部屋のベッドで仰向けに寝ていた。