運命のヒト
夜明け前の透き通った群青色の空。
地上では、がらんとした大通りで信号が寂しげに点滅している。
午前五時半。あたしは昨夜シロが携帯を落としたという場所に、ひとりで再びやって来た。
数時間前まで賑わっていたこの街も、今はひっそりと静かだ。
通り沿いに建つお店はどこもシャッターが閉まり、人の気配はない。
五メートルほど離れた飲食店の軒先では、放置されたゴミ袋にカラスたちが群がっていた。
あたしはその光景に背を向け、まだ光のささない東の空を見た。