運命のヒト
シロは観念したような瞳で、じっとあたしを見つめていたかと思うと。
「なぁ、美園」
突然にこっと笑って、言った。
「映画の話でもしよっか」
「……映画?」
こんなときに何を言い出すんだろう。と一瞬怪訝に思ったけれど、すぐにわかった。
これは、シロの閉ざされた扉を開く鍵なんだ。
「そう。俺が今から話すのは、つまらない三流映画のあらすじ。
だから美園は信じる必要もないし、笑い飛ばしてくれてもいいよ」
笑顔でそんなことを言うシロの唇が、かすかに震えている。
それが寒さのせいだけじゃないと、あたしにも痛いほどわかった。