運命のヒト
シロは抑揚のない声で、さらっと言った。
「ベッドで眠ったはずが、気づけば1996年にいた。自分が本来いるはずの時間の、ずっと前に」
「え……?」
思いもよらないところに話が飛んで、あたしは困惑にする。
「ちょっと待って。じゃあ、シ……主人公は、タイムスリップしたってこと?」
そうなるね、とシロは言った。
「……あはっ……な、何それ……。
あ、もしかしてアレ? 変わり者の博士が発明した、車の話?
それとも理科室でラベンダーの香りを嗅いだとか?」
有名なタイムトラベル映画の話題を出して、わざと茶化すあたし。