運命のヒト

あたしは濡れた顔でむりやり笑ってうなずいた。

シロも笑顔だけど、どこか泣いてるようにも見えた。



「男が女の子と過ごしたのは、ほんの数日の出来事。

けど、女の子には10年の年月が流れていた。


……忘れられるために出逢う、繰り返しの運命だった。

それでも男にとって、彼女は全てだった。

時間の中で迷子になった男が、たったひとり、通じ合えた相手だったから」


シロ……。


「――そして」

ふいに、シロの声が低くなった。
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