運命のヒト
しなやかな筋肉と、太い背骨の感触。
女のあたしとは何もかも違う躰なのに、溶けてひとつになれる気がする。
やがて、大きな波があたしを丸ごと飲みこんだ。
脱力してどこまでも沈んでいきそうなあたしを、シロの腕が抱きとめてくれる。
甘い愛撫とは打って変わり、じっと抱きしめられていると、シロの体温や匂いが自分に染みこんでいくようだった。
それからどのくらいの間、そうしていただろう。
ふいに腕の力をゆるめたシロは、あたしと目を合わせて優しく微笑み、そしてチュッと音の鳴るキスをした。
「残念だけど、ここまでにしとこう」
「……え?」
突然、上体を起こしてあたしから離れるシロ。
あたしは熱を引きずったままの声で尋ねた。
「なんで?」
まだ最後までしてないのに……。