運命のヒト
「万が一でも妊娠したらマズイじゃん」
思いもよらない遠い所から、いきなりボールを投げられたような驚きだった。
妊娠。そのメカニズムはもちろん理解しているけど、セックスと直結して考えたことは、正直今まであまりなかったから。
でも、たしかに本来そういうものなんだ。セックスは子孫を残すためのもの。
「あたし……いいよ」
突発的にそんな感情が沸いた。
「シロの子どもだったらいい。ううん、シロの子どもが欲しい。一緒に過ごした時間の、証が欲しいの」
シロはしばらく言い淀むような間を置いて、それから言った。
「ダメだよ、美園。すぐに俺の記憶は消える。そのときどうなるか、わかるだろ?」