運命のヒト
「ひどい女だな、君は」
その声を聞いて、思わず悲鳴を上げそうになった。
隣に座ったのは、沢村さんだった。
「どうして俺の電話を無視するんだ。何回も何回もかけてるのに。俺のこと愛してたんじゃないのか?」
沢村さんはあたしの二の腕をつかみ、息がかかりそうなほど迫ってくる。
スクリーンでは映画がクライマックスに差しかかっていた。
『愛してるわ』と女の役者が熱く叫ぶ。
あたしは目の前の現実に、恐怖で凍りつきそうだった。