運命のヒト
「……ありがとう」
いつのまにか映画館を出ていたらしい。強い北風に背筋が震える。
あたしはもそもそとコートを着て、目の前の彼を見つめた。
なんでこの人がここにいるんだろう、と思いながら……。
「――ふはっ」
「え?」
真顔から一転、彼は急にふざけた様子で笑い出した。
「あはははっ。さっきの俺、カッコよすぎじゃなかった? 少女マンガかっつーの」
……わけがわからない。
あれはお芝居だったとでも言うの?