運命のヒト



「――…弟は、幸せそうにメールを打っていました。起き上がれないからベッドで横になったまま、何日もかけて」


息をひきとったのはメールが完成した翌日です。

シロのお兄さんの雅人さんは、静かにそう言った。


あたしと大我は携帯の画面を見つめたまま動かなかった。

涙も、悲しみの言葉すらも。何もなかった。


永遠にシロが去ったこの世界で。


「そういえば」

雅人さんが思い出したように言った。
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