運命のヒト

コロコロと変わる矛盾だらけの態度。昨夜からあたしは振り回されっぱなしだ。

出会っていきなり抱きしめたかと思えば、次の日にはそっけなくて。

強引にあたしを連れ去ったかと思えば、笑いのネタにして。

真剣な彼と、いいかげんな彼。どっちが本当なのかわからない。


……なのに、なぜだろう、あたし。


――『その程度しか美園を想ってないなら、俺がもらう』


あっちが本当の彼なんじゃないかって思ってしまうのは。思いたいのは。


「タカシ!」

そのとき、怒気を含んだ声が背後から響いた。

20代後半くらいの派手な女の人が、あたしを追い越して彼の前に立つ。映画館においてきた彼女だった。

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