運命のヒト
「バカ。ちゃんと計れよ」
そう言って彼は、チェストの引き出しを開けて体温計を探し始めた。
そのときだった。
ゴトン、と何かが引き出しから床に落ちた。
「……なんだ? やけに古いデザインだな。お前の?」
それは、白い携帯電話だった。
わたしの携帯じゃない。見覚えがない。まったく記憶にない。
なのに……見たとたん胸が締めつけられた。
言いようのない切なさと、懐かしさ。
そして愛おしさが唐突にこみ上げた。