運命のヒト

そう、とても温かくて、泣きたいくらい幸せな夢……。

どんな内容だったかは、もう思い出せないけれど。


きっとそれは、誰もが胸の奥に持っている“特別な箱”に入っていて。

もう二度と箱の鍵を開けることはない、だけど、決してなくならない。

今のわたしを作ってくれた、大切な時間たち……。


彼は「あぁ」とうなずき、そしてすべて包み込むような優しい声で言った。


「風邪で寝込んだときは、いろんな夢を見るもんだよな」

「……うん」
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