運命のヒト

「もう2時じゃん。帰るわ」

「あの、大我……」

とっさに呼びとめたけれど、次に続く言葉が見つからなかった。


「ん?」

「……ううん、何でもない。見送るよ」


起きあがろうとするあたしの肩を彼が優しく押す。

「いいから寝てろ」


制止を聞かず、わたしは玄関まで見送りに出た。


「早く布団入れよ」

そっけない口調で心配しながら、ドアノブに手をかける彼。


「うん……」

あたしの中で、ついさっき胸に芽生えた“何か”が、喉まで出かかっていた。

けれど、それが何なのか自分でもよくわからなくて


「……おやすみ。ありがとうね」

あたしはそれだけ言って、小さく手を振った。


彼が出ていった玄関のドアがゆっくり閉まり、彼の姿が視界から消えていく。


――『いいかげん付き合わないの?』


友達の言葉が、なぜか脳裏で響いていた。


そのとき。
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