運命のヒト

わたしはすぐには答えず、代わりに両手で彼の左手を握る。


いつも守ってくれた手。
そしてこれからは、ひとつの幸せを一緒に築いていく手。


「……よろしくお願いします」


ともに、生きてゆこう。

死がふたりを別つまで――……。


 * * *


夫の運転する車が山道を抜けると、急に視界が開けた。


白いガードレールのむこうは海。一面に反射する光に、わたしは目を細める。

目的地はもうすぐだ。
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