運命のヒト
「ちょっと開けていい?」
「あぁ」
海岸沿いを走りながら、わたしは窓を半分ほど開けた。
潮の香りがする初夏の風。
コバルトブルーに輝く波。
カーラジオからはDJの声が心地よく響いている。
『次にお届けするナンバーは、80年代に公開された映画――
“ある日どこかで”のテーマ曲で、“Somewhere in Time”』
流れてくる美しい旋律に耳を傾けながら、あたしは潮風を胸いっぱいに吸い込んだ。