運命のヒト
Chapter.1
午前0時のオトコ
――パンッ!!
やけに鮮やかな音に驚いて、痛みを感じるまで数秒かかった。
「この泥棒猫!」
なんて安っぽいセリフだろう。
まぁ、打たれた頬に手を当てて立ち尽くすあたしも、たいがい安っぽいけれど。
「今後一切うちの主人には関わらないで。破ったら法的手段に出ますからね」
派手に足音を鳴らして女性が去っていく。そんな歩き方をしてヒールが折れないかと、こっちが心配になるくらい。
女性がドアから出ていくと、張りつめていた店内の空気がようやく緩んだ。