運命のヒト
中学のとき、あたしはレンタルビデオ屋でワケもなくこの映画に惹かれた。
初めて借りて観たときは、一晩涙が止まらなかった。
中でも、特に好きな台詞がある。
ヒロインのエリーズの台詞。
運命の人が現れるのを待っていた彼女が、リチャードという青年に出逢った瞬間、口にする――…
「――…“あなたなの?”」
頭の中で再生したエリーズの声と重なるように、シロがつぶやいた。
あたしは息をのんで彼を見つめた。
「この映画で俺が一番好きな台詞なんだ」
穏やかな笑みをたたえてシロが言う。
……なんて素敵な偶然だろう。