運命のヒト
……そうか、もう来週だったのか。
お母さんの命日。
「ん。わかった」
『悪いな』
その律儀な声に、あたしは胸が少し苦しくなる。
普段、お父さんがお母さんのことを口にすることはほとんどないけど、本当は今でも悲しみを背負っているんじゃないか。
そんなことを考えて、不安になる。
あたしは電話のむこうに見えないのがわかりつつも、首を横に振った。
「お仕事だから仕方ないよ。それに今年は法事の年じゃないし、お母さんだって許してくれると思うよ」
『あぁ……』
重く返事したお父さんは、それから少し間を置いて、『でも』と言った。
『その日は、美園の誕生日でもあるだろう?』