運命のヒト
言われることは予想していたのに、返事がとっさにできなかった。
カレンダーの日付の欄に、あたしは爪先でそっと触れる。
すべての人に平等に与えられた、年に一度の特別な日。
……あたしにとってそれは、母を失った日と同じだ。
「当日にお祝いしてやれなくてゴメンな、美園」
気まずそうにお父さんが謝り、あたしはあわてて明るい声を出した。
「あはっ……。やだなぁ~、あたしもう23になるんだよ? 父親と誕生日を過ごすほどモテないわけじゃないですから」
「そうか」
お父さんが温かいため息まじりに言った。