運命のヒト

言われることは予想していたのに、返事がとっさにできなかった。


カレンダーの日付の欄に、あたしは爪先でそっと触れる。

すべての人に平等に与えられた、年に一度の特別な日。


……あたしにとってそれは、母を失った日と同じだ。


「当日にお祝いしてやれなくてゴメンな、美園」

気まずそうにお父さんが謝り、あたしはあわてて明るい声を出した。


「あはっ……。やだなぁ~、あたしもう23になるんだよ? 父親と誕生日を過ごすほどモテないわけじゃないですから」

「そうか」

お父さんが温かいため息まじりに言った。

< 68 / 415 >

この作品をシェア

pagetop