運命のヒト
「えっ、マジで? ごめん、今日は出かけてるんだ」
『……あー、そう。じゃ、ポストに入れとく』
「うん、お願い。ありがとね大我」
電話を終えたあたしは、くるりとジャングルジムの方をふり返った。
そこにはさっきと変わらずシロが座っていて――
けれどその表情に、あたしはハッと息をのんだ。
……冷たい顔。うつろな顔。寂しそうな顔。
どう形容してもしっくりこない、初めて目にする表情でシロは遠くを見ていた。
今にも消えてしまいそうな蜃気楼のように、頼りなくて儚げな横顔。
傾き始めた太陽の光が、彼の輪郭をぼんやりと照らしていた。
「……シロっ」
思わず名前を呼ぶと、シロはこちらを見て、「電話、早いじゃん」といつもの表情に戻った。