運命のヒト
あたしはあわてて口をつぐむ。幸い、オフィス内は電話やコピー機の音で騒がしく、周囲に気づかれなかったけど。
「美園さん、寝不足ですかぁ?」
気を引き締めるために清涼タイプの目薬を差していると、隣のデスクの青木さんが声をかけてきた。
あたしと同じ事務の派遣社員で、18歳の彼女。
仕事に対する考えが甘く、正社員からは評判がよくない。
と、あたしにこっそり教えてくれたのは元カレの沢村さんだ。
「あ、うん。ちょっと夜中まで本読んじゃって」
「なぁんだ、彼氏とデートだったのかと思いました」