運命のヒト
「彼氏なんていないよ」
「うっそー。美園さん美人なのにぃ」
いちいち声が大きい彼女に、主任が咳払いをする。
青木さんは「すみませぇん」と肩をすくめて書類に向き直った。
……まったく、この手の私語は勘弁してほしい。
席が離れているとはいえ、同じオフィスには沢村さんもいるのだから。
あたしは恐る恐る沢村さんの方を見た。
彼はデスクトップパソコンから顔を半分のぞかせ、恨めしそうにこちらを睨んでいた。