幸せを運ぶ堕天使
俺が天界特有の魔法、転移魔法で連れてこられた場所は、天界で最も広く空に一番近いと言われている会場だ。
俺はその誰一人として観客がいない会場のど真ん中に、検察官付きで立たされた。
ちょっと悲しい。
「受刑者No.16、シュレイ・レクセル。この者は人間界の人間を幸せにしすぎた罪で、天界追放の刑に処する!」
直立不動で立っていると姿は見えないものの、声が聞こえた。
…うん、理不尽すぎる内容だね。
もちろん俺の口から零れた言葉は、
「…は」
しかない。
というか、何で?
「何でそんな罪を着せられなければ…?」
いや、だってそうでしょ。
人を幸せにすることに罪はない。
いいことだ。
「何を言っている!このたわけが!世界の幸せの均衡がとれないだろう!」
…あ、そういうことですか。
それはすみませんでした。
「そうですか、それは失礼しました」
うーむ、人を幸せにすることはいいが、人を幸せにしすぎてはいけないのか…難しい…。
なんて一人で思っていると、俺の返答が思いの外予想外すぎたのか、今度はあっちから「…は」という間抜けな返事が返ってきた。