幸せを運ぶ堕天使
しかし一つ咳払いをすると、威厳のある声でだらだらと何か言って、こう言った。
「言い残すことはないか?」
あぁ、もうきてしまったか。
そう思っている自分に素直に驚いた。
この天界に生を受けて約100年、やはり馴染み深い何かがあったのか、急に天界が恋しくなってくる。
上司の顔や、部下の顔、子供達の笑顔。
死んだわけではないのに走馬灯のように思い出されていく。
特別、何か言いたいことはない。
けれど、これだけは言わなければいけない気がした。
「今まで笑顔を与えてくれて、ありがとうございました」
生きているという喜びが笑顔に、笑顔にさせているという喜びが笑顔に。
願わくは
「ずっと、笑顔が続きますように」
笑顔の絶えない世界で在り続けますように。