§魂呼びの桜§ 【平安編】
まこと、口だけは達者な兄上でいらっしゃる
呆れたように物の怪が言った。
それで己の罪が減じるとでもお思いか
そのおつむりにあるのは立身出世のことばかり
女人は都合の良い玩具としか思うておられぬ
思えば、あの姫も哀れなものじゃ
お前のような物の怪に、何がわかるというのだ
わが心の、何がわかるというのだ!
右大将のその言葉に、物の怪はすっと目を細めた。
わかりとうもないわ
嘲笑と共に言い放つ。
なに
われはただ、面白ければよいのじゃ
邪な心を持つものに取り憑き、掻き乱し、一時楽しめればそれでよい
ここはそれにふさわしく、さまざまな嫉妬が渦巻いておるわ!