§魂呼びの桜§ 【平安編】
物の怪は藤壺を肩に担いだまま、がくりと膝を着いた。
もっと、もっと、遊びたい……
のう、右大将殿
遊びとは、かくも楽しく愉快なもの
人を翻弄することほど面白いことはない
のう、右大将殿
そうであろう
われは、もっと、ここにいたい………――
物の怪のおぞましい気配が消えた。
どさっと大きな音を立てて、藤壺と麗景殿が床に倒れこんだ。
女房が慌てて駆け寄る。
中宮さま!
皇后さま!
あお向けられた麗景殿は、元の美しい顔に戻っていた。
そして、藤壷は、今なお深い眠りの中にあった。