§魂呼びの桜§ 【平安編】
なぜ、目覚めぬ
帝はそっと藤壷の頬を撫でた。
滑らかな肌が、彼女がまだ確かに生きているのだということを教えてくれる。
右大将
床にひれ伏したままの右大将が、のろのろと顔を上げた。
麗景殿を局に運んでおやり
そして引き続き祓を行うのだ
もう二度と、物の怪に付け入られぬようにせねばならぬ
は
いつになく覇気のない声で答えると、右大将は気を失ったままの妹姫を抱き上げ、藤壷をあとにしようとした。