§魂呼びの桜§ 【平安編】
わたくしがあなたさまに恋をしたのはほんとう
でもそれは、わたくしの欲のはけ口でもあったのか
入内したくなくて、なんとか今の生活から抜け出したくて、でも手段がなくて……
少将さま
少将さま
巻き込んでごめんなさい
何も知らない童女のようなわたくしをお許しくださいませ
あなたさまの一時の気まぐれであったものを
それをわたくしは心のどこかで気付きながら、見て見ぬふりをしていたのです
ええ、そう
すべては、欲であり、煩悩……
ややを授かった時に気付かなくてはならなかったのだ
本当の愛をくださるお方のことを
藤壷はそっと手を伸ばし、右大将の乱れた髪を梳いた。
優しく優しく、まるで母が子の頭を撫でるように。
少将さま、いえ、今は右大将さまね
帰りましょう
わたくしたちのみやこへ