§魂呼びの桜§ 【平安編】

まあ、左近少将さまが……



母は驚いたように声を上げた。



では、昨夜の公達は、少将さま……



姫は、袂の中に隠している彼の扇を握り締めた。



はい、左様にございます



母と女房の会話は続く。



左近少将さまと言えば、今をときめくお方

宮中でのご評判も絶大であるとか……

あまたの殿上人が、ご自分の姫君を北の方にとお勧めになっているそうにございますわ



女房は噂好きである。


特に、宮中の噂は……。


深窓の姫は女房の噂話によって、世間の動向を知るのだった。



姫君を……



もしその中の誰かを、左近少将が選んだとしたら。




わたくしはもはや生きてはいられまい……



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