§魂呼びの桜§ 【平安編】
やはり、おいでだったのだわ
姫の胸は、歓喜に打ち震えた。
夢にまで見た愛しい人がそこにいる。
月読の姫と呼んでくれた、優しいお方がすぐ近くにいるのだ。
わたくしもここにおりまする……
声に出せぬ辛さ。
気付いてもらえぬもどかしさ。
それは思いの強さと相まって、姫の心を蝕んでいく。
どうにかして、わたくしがここにいることを知っていただきたいものを……
姫は隣に座る北の方に、にじり寄った。