§魂呼びの桜§ 【平安編】
月見の宴から時を経ずして、姫は入内した。
賜った殿舎は、飛香舎(ヒギョウシャ)。
庭に藤が植えられていたことから、別称を藤壺と言う。
『源氏の君』の最愛のお方も、この藤壺におられた……。
藤壺女御(ニョウゴ)と称せられるようになった左大臣の姫は、そのような感慨の中にいた。
『藤壺の宮』も、帝の寵愛を受けながら、源氏への秘めた愛に苦しんだ。
許されぬ愛の果てに、ついには国母となり、女人(ニョニン)としての最高の人生を送った人。
けれどその心の中には、深い闇があった。
誰にも悟られることなく『光る君』を想い続け、己の心の闇と葛藤した。
それでも最後まで毅然とすることを忘れることはなく……。
そのようなお方と同じ藤壺を賜った。
これも運命……?
主上(オカミ)ではない方に懸想(ケソウ)しているわたくしも、『藤壺の宮』と同じように許されぬ恋に苦しまなくてはならないのだろうか……。
いいえ。
わたくしは、そうはならないわ。
けっして、そうはならない……。
賜った殿舎は、飛香舎(ヒギョウシャ)。
庭に藤が植えられていたことから、別称を藤壺と言う。
『源氏の君』の最愛のお方も、この藤壺におられた……。
藤壺女御(ニョウゴ)と称せられるようになった左大臣の姫は、そのような感慨の中にいた。
『藤壺の宮』も、帝の寵愛を受けながら、源氏への秘めた愛に苦しんだ。
許されぬ愛の果てに、ついには国母となり、女人(ニョニン)としての最高の人生を送った人。
けれどその心の中には、深い闇があった。
誰にも悟られることなく『光る君』を想い続け、己の心の闇と葛藤した。
それでも最後まで毅然とすることを忘れることはなく……。
そのようなお方と同じ藤壺を賜った。
これも運命……?
主上(オカミ)ではない方に懸想(ケソウ)しているわたくしも、『藤壺の宮』と同じように許されぬ恋に苦しまなくてはならないのだろうか……。
いいえ。
わたくしは、そうはならないわ。
けっして、そうはならない……。