§魂呼びの桜§ 【平安編】
帝は藤壺女御を寵愛した。



理由ありきの寵愛。



後見のなかった帝にとって、外戚となった左大臣は強い後ろ盾となる。



女御が御子を産み、その子が東宮となれば、さらに関係は強固なものとなるだろう。



朝廷での権力をより強固なものにしたい左大臣と、足場を固めたいと思っていた帝の思惑が、みごとに合致したこの度の入内だった。



だから、帝は藤壺女御を大切にする。



先に入内していた右大臣の姫よりも……。



あまたいる後宮の女人の中で、帝の寵愛を独り占めしていた右大臣の姫。



今の麗景殿女御。



しかし一の后の座は、今や藤壺女御に奪われてしまった。



一族の憎悪がその身に集まったかのように、藤壺に対し憎しみを露にする麗景殿。



良好であった左右の大臣の関係も微妙なものになりつつあったーーーーー。




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