§魂呼びの桜§ 【平安編】
いいえ
ただあまりに素晴らしい演奏をなさいましたから……
そして、彼女は、あの夜以来初めて、恋しい男と言葉を交わしたのだったーーー。
たいそう名手でいらっしゃいますのね
ともすれば擦れてしまいそうな声を振り絞った。
恐れ入ります
そう応え、深々と頭を下げる少将。
臣下としての礼を逸しない、淡々とした態度。
オカミ
主上の御前ですもの
冷静さを保つために、自分に言い聞かせる。