§魂呼びの桜§ 【平安編】
帝の藤壺への寵愛は、いっそう深く、篤いものになっていった。
それに伴い、夜のお召しも多くなっていく。
中宮はこのところ、心と体がまるで別のところにあるようだった。
ふわふわと宙に浮いているようで、心もとない。
少将を思いながら、体はぬくもりを求め、喜悦に溺れていく。
そんな自分が許せず、自らを責めた。
彼女はその頃から、体が妙に火照り、吐き気を感じるようになっていったのだ。
おかしい
どうしてこんなにも苦しいのだろう
どうしてわたくしばかりが、このような責め苦を負わねばならないのか
そしてしばらくして、中宮ご懐妊の朗報が宮中を駆け巡ったのだ。