§魂呼びの桜§ 【平安編】
ここに、ややが
主上のややが
なぜ、この子はここにいるのだろう
いらぬ子が
望まぬ子が
わたくしの欲しいのは、
この腹に宿ってよいのは、
少将さまの子であるのに
悪阻の辛さも、すべてややのせい。
そしてこのような苦しみを与えた帝が、ますます憎らしくなっていく。
中宮のそんな思いをよそに、おなかのややはすくすくと育っていった。
お父上さまは寺社にご安産のご祈祷をお願いされたとか
北の方さまも、毎日仏さまにお経を上げておられるそうにございます
女房がする、そのような報告など煩わしく、聞く気にすらなれない。