§魂呼びの桜§ 【平安編】






一の女房が応対する。




これは皇后さま、慌しいお渡り、どうされたというのでしょう




麗景殿は険しい目つきで、藤壺が伏している御帳台を見ている。




麗景殿さま……



戸惑う女房を尻目に、彼女は言い捨てた。





そのお腹のややは、まこと主上の御子でいらっしゃるのか


と。





麗景殿さま、なんということを





お黙り


これを見りゃれ





それは……







これは、そちらの中宮さまが密かに隠し持たれていた男扇


元はわが兄上の、右大将殿のお持ちであったものじゃ



< 90 / 126 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop