§魂呼びの桜§ 【平安編】
一の女房が応対する。
これは皇后さま、慌しいお渡り、どうされたというのでしょう
麗景殿は険しい目つきで、藤壺が伏している御帳台を見ている。
麗景殿さま……
戸惑う女房を尻目に、彼女は言い捨てた。
そのお腹のややは、まこと主上の御子でいらっしゃるのか
と。
麗景殿さま、なんということを
お黙り
これを見りゃれ
それは……
これは、そちらの中宮さまが密かに隠し持たれていた男扇
元はわが兄上の、右大将殿のお持ちであったものじゃ