§魂呼びの桜§ 【平安編】
女房の切なる願いは聞き届けられることはなかった。
麗景殿は頓着する様子もなく、中宮に近寄り肩を揺さぶり起こそうとしている。
一の女房は急いで他の女房を帝の元へ走らせ、自らは麗景殿を止めようと後ろから羽交い絞めにする。
おやめくださいませ
しかし麗景殿の力は常人かと疑うような強さで、女房の腕を振り解くと、そのまま投げ捨てたのだ。
女房は御簾にぶつかって、そのまま向こう側に転がり落ちた。
御簾が音を立てて落ちる。
そしてまた麗景殿は肩を揺さぶり、頬を叩き続けた。
その姿は一種狂人めいて見える。
けれど、そのような騒ぎの中でも、藤壺が目を覚ますことはなかったのだった。。