§魂呼びの桜§ 【平安編】
たれぞ、北面の武士と祈祷の僧をお呼び
それから右大将と
騒ぎを聞きつけてやって来ていた尚侍(ナイシノカミ)が、命を受け急いで出て行った。
右大将殿もお呼びになるか
その声は可憐な女人(ニョニン)のものではなかった。
地を這うようなおぞましい声。
そなたは、たれぞ
わたくしは、麗景殿にございます
他の誰でもありませんわ
あなたさまをお慕いし、あなたの愛だけを頼みに思うている哀れな女にございます
それなのに、あなたさまはあのような浅ましい女に心を奪われ、わたくしをないがしろになさり、ついには御子(ミコ)まであの女の元に
あの女がどのようなものであるか、教えて差し上げましょうか
そなたは、何を言っておるのだ
そなたは麗景殿などではない
そなたは禍々しい物の怪じゃ