§魂呼びの桜§ 【平安編】




帝が何か言うたびに、口はさらに裂け、目は飛び出さんばかりに大きくなる。


次々に気を失う女房たち。




もう、やめてくれ……





搾り出すように、帝が呟いた。


その時。





お呼びでございますか




右大将だった。


顔を上げた右大将は、麗景殿の様を見て驚愕した。




ようおいで下された、兄上





親しげにそう言う物の怪に対し、右大将は懐剣を取り出した。






わたくしをお切りになるか

この、あなたさまのただ一人の妹姫を

あなたさまをいつも頼みに思い、それでいながらあなたさまの常日頃のご交遊に心を痛めていた、お優しい姫君を



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