§魂呼びの桜§ 【平安編】
右大将は懐剣を手に、わなわなと震えていた。
なんという恥辱
帝の側近中の側近である我が身を、陥れようとでも言うのか
だから、知らぬ振りをしたのだ
いずれ入内すると決まっている姫だとわかったから、あの夜のことをなかったことにしたのではないか
それをいつまでも引きずっていたのは、そこに眠る姫だけだ
愚かしく考えの浅い姫
そのような姫に声をかけてしまったことが悔やまれる
“恋”のことを何も知らぬ子供になど、この私が本気になるはずはないのに