あなた色に染まりたい
「俺もこうやって紗羽と想いが通じて、すっげぇ幸せ。出会った時から、紗羽以外考えられなかったから。」


「出会った時?」


「ん……桜の木の下で紗羽を見かけた時だよ。」


「あ……」




あたしが、桜を見上げながら泣いていた時……




「きっと、紗羽が俺に助けを求めていたんだよ。あの時引き寄せられるように、あの桜の木まで行ったからさ。」


「そっか……じゃあ、このアパートに来たのも、あたしが蓮を呼んだのかな。」




桜の頃は、最悪な精神状態だったのに……


そんなあたしを見て、好きになってくれたなんて奇跡に近いよ。




「俺と紗羽が出会うことは、きっと必然だったんだな。」


「うん。」




いろんな偶然が重なったんだと思っていたけれど、きっと蓮とあたしのために、用意されていた道だったんだなって、そう思う。




「蓮……眠い。」


「そうだな、寝るか。」


「うん。」




蓮のぬくもりに包まれながら、静かに眠りに就いた。


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