あなた色に染まりたい
「紗羽、それ何?」



美香は、あたしが裏返しにして持っているビラを指差している。



「あっそうだ! 即決してくれた子がいて、どうすればいいのかわからなくて、名前と電話番号を聞いておいたの」


「へぇー、また紗羽ファンが入るんだ?」


「は? 何言ってんの?」


「だってそれ、男の子でしょ?」



す、凄いっ!


何でまだ名前を見ていないのにわかるの?



「何でわかるのかって顔をしているけれど?」


「うん、そう思ってた」


「紗羽が気付かないだけで、サークル内には紗羽信者がいっぱいだよ」


「そんなことないって。それに“信者”ってなんかヤダ」


「紗羽さえ恋する気になれば、相手はいくらでもいるのに」



美香は口を尖らせながらそう言うけれど……



「恋はもういいよ」



本気でそう思う。


形はどうであれ、まだあたしの心の中には大輝がいるし……


正直、人を好きになれる気もしない。
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